明るい少年



「あ‥あの‥。」


私はやっと声を出すことができた。


‥が男子生徒の方が早かった。


「あぁ!俺は忘れ物を取りに来ただけだから。ほら、リコーダー!」


そう言うと男子生徒は机に近づき中から、リコーダーを取り出した。


「これを取りに来たらさ、たまたま君のピアノの音が聞こえたんだ。すごくいいね。」


また男子生徒がニコリと微笑んだ。


「あ‥ありがとう。」


私は少し、恥ずかしくなった。


「また聞かせてよ君のピアノ。‥じゃあ、またね。」


そう言うと名前も何も知らない男子生徒は行ってしまった。


私はしばらく放心状態だった。


素直に嬉しかった‥。


できて当たり前だったから、誉められたことなんて1度もなかった。


だけど、心の底から言われた気がして嬉しかったのだ。


しばらくして、その男子生徒の名前がわかった。
探すまでもなく私と同じクラスだった。


名前は‥


「なぁ千明!!」

千明と呼ばれた男子が男子達とじゃれあっていた。


彼は笹川千明。同じ1年生。スポーツ万能でクラスの人気者。そして、誰にもでも優しいからクラスの女子達からはモテていた。