笹川くんが私を抱きしめた。

「さ‥笹川くん?」

これにびっくりする私。

「バーカ‥。俺はたとえ橋村でも自分から心を読みたくねぇよ。もう決めたんだ。誰も傷つけないて。だから‥誘惑するなよ‥。誘惑したら花音のこともっと知りたくなる‥。」

「笹川くん‥い‥今、私の名前‥。」

笹川くんに初めて名前を呼ばれて心臓がドキドキする。

「俺は橋村のこと花音て呼びたい。だめかな?」

「う‥うん。私のこと花音て呼んで‥。私も笹川くんのこと名前で呼びたい。‥千明くんでいいかな?」

「うん。上出来上出来。」

体をはなした千明くんの顔はとても嬉しそうだった。

そう言って千明くんは私の頭をなでてくれた。

「なぁ花音。まだLINE交換してなかったよな?交換しない?」

「うん。する!」

そう言って私と千明くんはふところからスマホを取り出した。

そうして私は千明くんとLINEを交換した。

私にとって男子と交換するのは千明くんが初めてだった。

「ありがとな花音。」

「こちらこそありがとう!」


そこまで言った時だった。


「いやー。すごく素晴らしいね!見てて羨ましいよ。」

「花音、よかったね!」

二人の男女が教室に入ってきた。

その人物は‥

「樹生!!」

と言う千明くん。

「結ちゃん!」

と言う私。

樹生くんと結ちゃんはどうやら見ていたようだ。

「樹生!てめぇ、盗み聞きするなんて卑怯だぞ!」

千明くんは樹生くんに詰め寄っていた。

私に近づく結ちゃんの顔もニヤニヤしていた。

樹生くんが平然と答える。

「盗み聞きなんてしてないよ。たまたま通りかかったら、今の様子が見えたんだよ。な、結?」

「そうそう。見ててこっちが幸せになっちゃうよー。」

結ちゃんはからかってきた。

「‥で、何か俺らに用なのか?」

千明くんが少しいじけている様子で樹生くんに聞く。

「そうだった。俺、千明に用があったんだよ。今日の体育祭の借り物。千明が借りたものは何だったんだ?」

私は思わず千明くんを見てしまった。

‥それ私も気になってた‥。

千明くんはと言うと顔が真っ赤になっていた。

「べ‥別に、音楽をやっている子て書いてあっただけだよ。それで花音を借りただけ。」

千明くんはとても動揺しているように見えた。