笹川くんは微笑みながら言った。

「俺、橋村に話したいことがあるから待ってたんだ。」

「話したいこと?なあに?」

私は興味津々で聞いていた。

すると笹川くんの顔に不安の色が浮かんだ。

「‥今から俺が話すこと聞いてくれる?‥それがどんな内容でも俺のこと嫌いになったりしない?‥。」

見ると笹川くんの手は震えていた。

「私、どんな話でも聞くよ!それに私は笹川くんのこと嫌いになんかならないよ!」

私は震える笹川くんの手を掴んだ。

不安そうにする笹川くんを見ていられなかった。

笹川くんは少し、落ち着いたのか話始めた。

「‥俺、ずっと橋村に黙ってたことがあるんだ。俺の秘密‥。」

「笹川くんの秘密‥?」


「うん。‥実は俺、人の心が読めるんだ‥。」

笹川くんはつらそうにその秘密を言った。

「‥‥えっ!?心が読めるの?」

私は驚きのあまり思わず聞き返していた。

「うん。心の声が聞こえてきたりもするんだ。‥でも、俺からは絶対に読まない。それは安心して。」

「で‥でも、なんで?どうしてそうなったの?」

笹川くんは少し視線を下に向けながら話した。

「生まれたときからそうだったんだよ。2歳ぐらいからすでに人の心が聞こえてた。この話をしても誰も信じてくれないんだ。親は一応、理解してくれているんだけど‥学校のやつらは信じてくれなかった。」

ここで私はあることに気づいた。それは樹生くんの言葉。

「あっ‥だから樹生くん、あんなことを‥。」

言ってみて気づいたが笹川くんは私と樹生くんの間で何があったか知っているようだった。

笹川くんは弱々しく微笑んだ。

「そう。心が読めるせいで俺は小学校の時たくさん傷ついた。低学年の時にそれを使っちゃったから‥だから、みんな気味悪がって離れていったんだ‥。」

いつの間にか外は暗くなりかけていた。

笹川くんの話は続いている。

「小学5年の時に樹生が転校してきたんだ。何も知らない樹生は俺と接してくれてた。だけどその秘密をある時バラされたんだ。もう俺は絶望しかなかった。また俺は一人になるって‥。けど樹生は違ったんだ。あいつはそれを俺の個性だと言ってくれた。俺はその言葉で救われたよ。だから俺にとってあいつは大切な友達なんだ。」

笹川くんは力強く言った。

「あっ‥ご‥ごめん!あつく語っちゃった‥。」

でも恥ずかしそうにも言った。

「ううん。笹川くんにとって樹生くんは大切な存在なんだってわかったよ。」

これは私の本心の言葉。

‥樹生くんがいたから今の笹川くんがいるんだね。

「この眼鏡もさ樹生のアイデアなんだ。眼鏡かけたら少しはましになるんじゃないかって。そしたら、少しはましになったよ。」

笹川くんは笑いながら言った。