気付いた時、辺りは真っ暗で何も見えず何も聞こえなかった
私は何故こんなところにいるんだろうか?
そもそもここは何処でどうやったら家に帰れるのだろうか?
…いや、別にどうでもいいか。
どうせ家にいても煙たがられるだけだ。
ならばいっそ此処で朽ち果てるのも悪くは無いな。
そう考えゴロンと横になり目を閉じた。
しばらくしていると、ペタ…ペタ…と足音が聞こえてきた。
こんな所に他に人がいたのか…
まぁ私には関係ないだろう。
しかし、その音は段々と私に近づいてきているような気がした。
いや、確実に近づいている。
私は起き上がり辺りを見回した。
しかし、さっきと変わらず何も見えない真っ暗な世界のままであった。
気のせいかと首を捻っていると、突然肩を叩かれた。私はあまりにも突然の事で驚き、バッと後ろを振り向いた。
プニッ
…は?
私は何が起こったか分からなかった。
理解できたのは数秒たってからだった。
後ろにいる誰かの指が私の頬を子供のように指してきた。
そいつはなんとも異様だった。
服は白いスーツでポロシャツは黒ネクタイは赤そして白い手袋。
髪型は茶髪で少し天然パーマが入っている。
身長は175~180ぐらいだろうか。
顔は切れ長の目に少し高めの鼻、しゅっとした輪郭と、イケメンの類に入るであろう。
歳は20前半に見える
…ここまではいいとしよう。
しかし問題点がある。
頭についていて時々ピクッと動く獣耳、とてもふわふわしている尻尾の様なものが4つ…
私は最初飾りだと思っていた。
だが2つとも作り物とは思えない。
…こいつ、何者だ?
私が怪しんでいるのを察したのかその男は自己紹介を始めた。
「やぁやぁ!僕はこの世界を作って、君を此処に連れてきた者だよ〜。あ、僕はね妖狐のルナールって言うんだ!よろしくね♪」
…こいつは何を言っているんだ?
世界を作った?
妖狐?
頭をどこかに打ったのでは無いだろうか。
私は思わず、
「お前大丈夫か?色々と」
と言ってしまった。
すると、ルナールと名乗った男はポカンとした感じで私を見ていた。
そして心配そうな様子で私に言った。
「君、頭でも打った?」
お前に言いたいわ!!
そう言いたいのをがんばって抑え、その言葉を飲み込んだ。
本当に何なんだこいつは。
話しているだけで疲れるなんてあいつ以外じゃ初めてだ…
いや、あいつの事を考えるのはやめよう。考えるだけ無駄だ。
「ねぇねぇ、本当に大丈夫?姫百合ちゃん」
「うん、大丈…夫……」
…今こいつ私の名前呼んだ?
サーッ…と血の気が引いたような感じがした。
「あんた、なんで名前…」
「ん?君のことなら何でも知ってるよ〜谷間姫百合ちゃん。6月12日生まれの高校1年生。血液型はA。金髪なのはちょっとした出来心だよね〜。それに切るのが面倒臭いと言って腰まで伸ばしてる。あ〜、あとつり目なのもずいぶん気にしてるね〜誰かに怖がられた?それにセーラー服だから少しヤンキーみたいだね〜」
そう言ってルナールは楽しそうに話してた。こいつ、なんで人の個人情報知ってんだよ…
「えー!!なんで知ってるかはさっき言ったじゃん!!…あ、言ってなかったか。僕ね妖狐の中でも天狐って呼ばれる種類なんだよ〜ほら、尻尾が4つあるでしょ?それが証拠!」
なんで得意気なんだ…あと、天狐とか知らん
「もう!少しぐらい勉強しなさい!!」
余計なお世話だ
「天狐はね、千里眼が使えて色んなことを見透かすことが出来るんだよ〜!!覚えといてね☆」
最後の星がイラつくな…
とりあえず、こいつはいかれてるっていうことが分かった。
個人情報がバレてるのはイカれてるストーカーかなにかだろう。
もう適当にあしらっとこう…
「へーそうなんだーすごいねー(棒)」
「あー!!絶対信じてないでしょ!ホントなんだからね?」
そう言ってむーっと頬を膨らませていた。
いや、そんな傷つくのかよ…
「とにかく!私に関わらないで。…やっとあの家から自由になれたんだから。」
「えー!!まさかここにずっといるつもり!?用が済んだらちゃんと返すからね?」