暫くそうして楽しく話していたのだが、見慣れない図書館の時計が目に入って。
(そうだ、醤油!)
家に帰るのに少しばかり遠回りになるけど、正直面倒くさいけど。
欲しいお菓子もあるし、探したいから行かないと。
「先輩、私そろそろ帰りますね。
お喋りに付き合わせてしまって、すみませんでした」
もう少しだけ話していたいな、って思うけど明日も来ればきっと会えるだろう。
きっとなだけで、確信はないけど。
「じゃあ、僕もこれ借りてから帰ろうかな。
全然いいよ、楽しかったから」
また話そうね、と付け加えて先輩は言った。
その手には、さっき話題にあがった本が
握られている。
逢坂先輩が、楽しんでくれていたなら良かった。
楽しくなくても口角はいくらでも上げられる。
愛想笑いが染み付いている人も沢山いる中で、
口先だけでも楽しいと言われるのはやっぱり人として嬉しいもの。
わざわざ口に出してくれるという事は、本心と受け取っていいだろう。