本から目が離せないくらい、夢中になって読む。
でも、姿勢が悪くて徐々に背中が痛くなってくる。
鞄からペンケースを取り出し、付箋が複数ついている台紙を手に取る。
ページに一時的に付箋を貼って机に置き、
肩を回したり座ったままストレッチをする。
座ったままだと普通なら隣の人に迷惑がかかるが、
今日も人の少ない席を選んだ。
窓際の椅子の数が、他と比べて少ないテーブル。
テーブル自体も比較的、小さくて勉強を目的とする人は避けてるみたい。
(教材を広げにくいもんね、邪魔になるから)
手で口を覆いながら、欠伸をかみ殺す。
リラックスした目で、周りを見回していたら。
「あ、どうも」
完全に油断していた。
バッチリと、昨日の先輩と目があってしまった。
挨拶されたので、会釈をしてみるけど少し照れくさい。
(リラックスしてるところを、完全に見られた)
そう思っている間に先輩は目をそらしていて、周辺を見渡している。
多分これから、何処に座るか考えるつもりなんだろう。
証拠に、昨日とは違う本を手にしながらウロウロしている。
「あのよかったら横、座りませんか?
決まってなかったらで構わないんですけど」
語尾がしどろもどろになりながら、
折角目があったのでので恐る恐る声をかけてみる。
昨日は会話という会話をしていなかったし、もうちょっと話してみたいと思った。
「いいの?
僕はいいけど、誰か待ってたりとか...」
僅かに驚きながら、問いかけてくるあたり場所は決まってないのだろう。
こちらの様子を伺いながら、気まずそうに言う先輩。
「誰も待っていませんよ。
どちらかというと、先輩を待っていました」
「え?」
先輩を待っていたのは事実で、本を読みながらいつ来るか気にしていた。
来るかもわからないのに、待っていたなんて変な感じだけど。
まだ名前も聞いていないし、顔見知り程度なのにこれでは可笑しかっただろうか。
「昨日、ちゃんとお礼を言ってなかったので」
ありがとうごさいました。って言えば、
やっぱり困ったような顔をして。
(うん、思ってた通りの人だなって)
話した事が無いはずなのに、気にかけてくれたり嫌な仕草もしない。
お礼を言っても、何の事だかわかっていないみたいで。
ただの良い人、お人好しなんだろうな。