「それより、今日は朝早いね。
バス早い時間のにしたの?」
少し早い感覚だったけど、正確な時間は見ていない。
腕時計は身につけずに鞄のファスナー付きポケットにあるので、
出さなければ確認できない。
もう教室に着くから、見なくても良いかなって思ってる。
「いやいや、別に早くないよ?
私はいつも通りだけど、ノドカこそ遅くない?」
確かに、佳織がいつも通りならそうかもしれない。
昨日だと教室に居るくらいの時間だろう。
あれ。
遅く出発した訳じゃないと思うんだけど、歩くのがゆっくりだったのか。
「そっか、私が遅かっただけだわ。
お菓子忘れないように確認してたからだね、きっと」
そう笑いながら誤魔化すけど、何となく負に落ちない。何となく。
そんなに物思いにふけっていたのか。
(我ながら危険なことをしてたっぽい)
「お菓子忘れない様にとか、相変わらずマイペース過ぎだわ。
ノドカは髪、そのままいいの?」
タイミングを見計らって、言おうと思っていた事。
不器用には有り難い話題なので、ここは甘えておこう。
「アレンジ、お願いしてもいいですか?」
「どうしよっかな〜?」
何を言っても、結局は優しい佳織。
実際、口ではそう言っていても楽しそうに笑っていて。
ふざけているのは、火を見るよりも明らかだ。
話しながら歩いていると、教室が見えてきて。
いつも私が来る頃にはまだ来ていない人が多い気がする。
(やっぱり、私が遅かっただけか)