そんな事はもういいけど、意識せずとも歩いていたので学校はすぐ先。
生徒玄関を通り過ぎると、廊下で見慣れた後ろ姿を見つける。
「おはよう、佳織」
言わずとも佳織で、声をかけると姿を探すように振り向く。
今日も相変わらずのヘアアレンジ...と思ったけど様子が違う。
珍しくストレートのままで、思わず目を見張る。
「あぁ、ノドカおはよう。教室まで一緒に行こうよ」
驚くのはもちろん私だけで、佳織に変わった様子はない。
来るの早いな、今日は。
「うん、そうしよう。
飴食べる?新しい味入荷しました」
「おう、貰うけどなんで?
突然、びっくりなんだけども」
元気がないのかと申し出るけど、どうやら的が外れたらしい。
「いや、なんでも?
髪ストレートだね、素敵」
これもただの気まぐれか、寝坊とかしなさそうだし。
思い浮かんだ質問をしてみるけど、失言だったかな。
(ヘアアレンジが得意だからって面倒な時もあるよね、私は毎日だ)
「ん?これか。
こういうスタイリングね、面倒とかじゃないよ」
そんな心配をよそに、佳織は何ともない様子で告げる。
手で髪を梳きながら、私が思っていた事をやんわり否定する。