「違うよ、たまにこうして来てるだけ。
家では本とか読まないし、暇だからね」
委員ではないらしいけど、放課後は殆ど此処にいるらしい。
来ているうちに家でも読むようになったらしい。
来たことが無かったから気付くことがなかった。
"そういう様な人"もいるのだと、親近感が湧く。
"そういう様な人"とは、私みたいに読書をあまりしない人の事。
全然ではなくて、あまり。
(私も全くしないとかじゃないし)
「そうなんですか、私は全然来たことなくて...。
何かお薦めの本ありますか?」
何冊か教えて欲しいです、と付け加えた。
数分前に会った様な人に聞くなんて、自分でも随分ちゃっかりしていると思う。
(そして図々しいな、自分の事なのに)
"来たことがない"ではなくて"全然"と加えたのは少しの見栄だった。
もうそんなに会う事のない人と思ったから、そんな風に誤魔化した。
会うかどうかも分からない人に、
自分を良く魅せる必要は無かったんじゃないか。
口に出してから思っても、もう遅い。
「感性は人それぞれだからね、特別お薦めってやつは無いけど。
俺が読んでみて、面白いと思ったのを教えるね」
それが気にいるかは、わからないけど。
一言一句、丁寧に応える人だと感じた。
面倒くさがらずに真正面から、話してくれている。
真面目な性格ってこういう事なんだ、という様な人。
友人見せるのとはまた違うだろうけど、蔑ろにせず応対してくれる。
こんなに丁寧に話す人は、珍しいんじゃないだろうか。
自分自身、砕けた言葉だったり一言ですませてしまう。
新鮮っていう言葉では、可笑しいかもしれない。
これが本来の会話の形なんだろう。