お菓子を頬張る手を止めない彼女。
なんでか、先輩の話をする佳織までしょんぼりしてきた様な気がする。
「ねえ、ノドカはなんでだと思う?
ただの後輩だけどさ、気になるじゃん。」
その言葉にお弁当を食べる手を止めた。
確かに的を得ている意見だと思う。
でも本当に"ただの後輩"だった時、佳織は受け入れられる?
私からも仲の良い先輩後輩に見えるけれど、
それでいいなんて思ってない筈だ。
友達じゃなくて後輩。
偶然に顔を合わせて何度か言葉を交わすだけの"後輩"だと思われてたら?
(そんなこと本人には言えないけど)
「仲がいいからこそ、言い難い事だってあるよ。」
「そう...かな」
彼女がどんな心情で後輩と言ったのか、想像まででしかわからない。
けれど、どんな気持ちを寄せていたかは知っているから。
「悩んでたとしても、自分でどうしようもなくなったら誰かに相談すると思う。
それは佳織かも知れないし、別の人かも知れない」
「うん、そうだね。
私が気にしても仕方が無いしね」
やっと笑顔が戻った顔には、ほんの少しだけ無理を感じた。
(全然だめだめじゃん、見栄っ張り)
ずっと後輩だと諦めているかの様な、その口ぶり。
正直、吹っ切れてはいないのだろう。
逸らすように別の話題を出した佳織と、雑談をしながら過ごした。
食べ終えても話すので、片付ける手はゆっくりだけど。
片付けを終えるとタイミングよく予鈴が鳴って、佳織は席に戻っていった。