いつの間にか、担任が教室を出て行っていた。
(今日はぼーっとし過ぎだな。気をつけなきゃ。)
「更科さん」
話しかけられてハッとする。
気をつけようと決めたのに、またすぐボーッとしてる。
「ごめん、どうしたの」
「あの。日誌の事なんだけど、更科さんに頼んでいい?」
あ、それ以外は自分がやるから。と。
話しかけてきたのは、言うまでもなく須田君だった。
(日誌か)
持ってこさせちゃったのに、
嫌な顔しないでそう話しかけてきてくれた須田君。
「うん、全然いいよ。ついでみたいになっちゃうけど、ごめんね。
さっきは、日誌持ってきてくれてありがとう」
「あぁ、その事なら大丈夫だよ。
お互い様だし、気にしないで」
くどいようだけど、嫌な顔ひとつしないで言ってくれるなんて優しい人なんだな。
(須田君、すごくいい人なのに悪いことしちゃったかも。)
「あ、お詫びと言ったらなんだけど。
よかったら、どうぞ」
そう言って、ポケットから出した飴を手のひらを上にして見せる。
ほんの気持ち程度だけど、お礼のつもり。
「ありがとう、じゃあ1つ貰うね」
そう言って席に戻っていった。