「おっす彩乃、今年も同じクラスだにい」

「おはよう円香、今年もよろしくね」

長い髪を一括りに纏め袖を捲っているのは平山円香、小学校からの同級生でありずっと同じクラスという、彩乃とは中々縁が深い女の子だ。
独特の話し方と少し変わった趣味を持っている、学校内では一種の有名人でもある。

「ところで何かあったにい?」

「えっ?何で?」

円香は昔から勘が異様に鋭い、学校での抜き打ちテストを察知する、内緒で付き合っているカップルを見抜く等々、彼女の第六感は彩乃も驚かされる程の代物だ。

「んにゃ、なんとなくだにい」

話したくないのを察してか、別の話題で雑談を交わしているとふわりといい香りが漂ってくる。

「あら、今年も同じクラスですのね」

「おっす玉緒」

「ちょっと!わたくしの事は四方院さんとお呼びなさいと何度言えばわかりますの?!」

胸元まで伸ばした亜麻色の髪をくるくると巻いている彼女は四方院 玉緒。
自分の名前を古臭いと言い嫌がっており、皆には姓で呼ぶように言っている。

「気にしすぎだにぃ」

「ぐぬぬぬ」

「まぁまぁ、それより今年もよろしくね四方 院さん」

「斑目さん、わたくしこそよろしくですの」

四方院さんと円香、よく円香がからかってはいるが何だかんだと仲が良い。