俺は遠い昔、あいつとの別れ際のことを思い出した。



俺はあの時、君に伝えた。

その時の僕の精一杯の気持ちを。


その時は恋愛感情なんてものはなかったから、思っていたことを素直に伝えたんだろう。




でも今は違う。




「あの時、先輩はなんて言ったんですか?」


俺の精一杯を覚えていてくれよと思ったが、もうどうでもよかった。


教えるがてら、俺は揺るぎないこの気持ちを君に伝えよう。










「好きだよ、紬」





「俺と付き合ってください。」






彼女は泣いた。白い頬を伝う涙は、この上なく綺麗だった。



白い頬がみるみる林檎のようにぽっと赤く染まる。

彼女に対する愛しさが込み上げてきた。








そして彼女は涙を流したまま、精一杯口を開いた。



「私も、先輩のことが好—————————。」


もう、どうでもよかった。嬉しさで涙が出てきそうだった。

長年忘れそうになりながらもずっと想っていた人が今、目の前にいる。