私は足早に屋上に向かった。

私は大抵そこにいる。

誰もいないし、風が気持ちよく、自分の世界に入れる気がする。

キーンコーンカーンコーンとチャイムがなる。

次の授業はサボることにしよう。

その場に座り、ポケットからスマホを取り出す。

そのとき、いきなりスマホが手から消えた。

言葉通り、すっと、消えた。

「え?!」

つかれてるのかな。でもポケットに手を入れてもない。スマホがない。

「だめでしょ、片倉さとみちゃん。授業サボったら!」

後ろから、誰かに話しかけられる。

そんなはず、ないのに...。
屋上に上がる階段は一つで、その階段は今私の前にある。
さっきまで誰もいなかったのになんで後ろから声がするの。誰も上がってこなかったのに。
隠れる場所だって全くないはずなのに。

おもいきって、バッと後ろを向くと、見覚えのある顔があった。

「...信条陸。」

そいつはニコッと笑って

「俺のこと知ってた?嬉しいな。」

と言った。


「あんたこそ、私の名前知ってたんだ。学校一のイケメン君。」

皮肉たっぷりに言ってやったつもりだったが、信条陸は首をかしげて

「いけめん...?なんだそれ。まあいい。俺は君を迎えに来たんだよ。」

と呟いた。