「来い」

「え?」

「...ついて来い」



おばあちゃんから奪い取るように大福とどら焼きの入った袋を受け取り、ガラガラ!と勢いよく扉を開けて出て行ってしまった。


ついて来い、って、え?

どこに?!



「ほら、紬ちゃん早く行きな!」

「え?でも、」

「はやく、はやく!」


2人に急かされ、訳もわからぬままボストンバッグを背負い急いでヒールを履き直した。


なにこれ、なにこれ?!



「あ、おばあちゃん、わらび餅のお代...!!」

「いいから、いいから!あ、引越し祝いってことで!」

「そんな、悪いよ!」


半分追い出されるようにしてのれんをくぐるとおばあちゃんに笑顔で手を振られる。

財布を出そうにもボストンバッグで両手が塞がっているし、先に出て行った男の人はだいぶ前を歩いている。



「ほら、早く行きなさい!藤は無愛想だけどとっても良い子だから、大丈夫よ!」



あー、もう!なんなこれ!

「また、今度!お金払いに来ます!」



2人に深く頭を下げて、今日1のダッシュで男の人を追いかける。




あの、私、ヒールなんですけど?!

御構い無しでスタスタ先を行く、藤と呼ばれる男に若干ムカつきながらも

住む所はなんとかなりそうだ、とホッとした。



遠くからでも不機嫌なんだと確認できる、その後ろ姿にやっと追いついたと思ったら、男はピタッと立ち止まった。

「ここ」



ゼェゼェと息を切らしながら顔を上げて、そのアパートを確認すると同時に私は凍りついた。



ここっ、て。

ここ??