「今までだったら、さっきみたいに女に引っ付かれた後は数時間は不機嫌だったのにさぁ。人間恋するとこうも変わるんだね」
「あの隼人がね」
どういう意味だ。
むっとして後ろの二人を睨む。
「麻由ちゃんと距離縮まってからは、なんか雰囲気も変わったし」
龍は気にした様子もなく笑いながらそう言った。
「雰囲気?」
そんなに自覚ないんだけど。
龍のとなりで彰も「そうそう」と続ける。
「優しくなったっていうか、トゲが薄くなったていうかね。しょっちゅうキレてるような顔してぶそくってた癖に、最近全然不機嫌そうな顔見ないもんね。この変わりようじゃ、もうちゅーしてるよ、このカップル」
投げキッス仕草をまねる彰に、俺は今度こそ頭をごついた。
「変な妄想働かせてんじゃねー。つーか、まだその前にカップルじゃないんだよ」
「なんだよ、まだそんなこと言ってんのかよ、もっと押してこうぜ! お前に好きだと言われて落ちない女はいないんだぜ? 俺だったら即答だよ、イエス!」
なぜか自信満々に断言する彰に、龍は呆れてため息をついた。
「彰が女だったら俺マジで世話が追いつかねえわ」
苦笑しながら、侑介も「それ、言えてる」と頷いた。