逃げようとするそいつの首根っこをぐっと掴んで引き留める。


「オイ、なにしてんだよ。侑介」


「…やっぱ気づくよね」


「当たり前だろうが、ほかの連中も来てんのか」


「いや、俺だけ。でも長く戻ってねーからあいつらも来るかも」



へらっと笑う世話焼きの友人に、大げさに息をつく。


「だって、気になるに決まってんじゃん!俺だって遠目でしか見たことないんだから」


「だからって隠れてストーカーまがいのことすんなよ、怪しいだろうが」


「二人の邪魔したくないじゃん?あ、てか隼人。いいの、あの子もういなくなっちゃってるけど」


「は!?」



うしろを振り向くとさっきまでそこにいた彼女はさっぱり消えていた。



…やべえ、せっかく見つけたと思ったらこんな時間に野放しにしちまうなんて。



「………」


「………」


「…えっと、ワリィ。」



頭をかいてしょげてる侑介に、俺はペシリとデコをたたいてから「しょうがねえ」と息を吐いた。



会えて話せただけ、よかった。


もうそれだけで



今はそれだけで十分だ。