「ってえな…」
イライラしてただけに声はいつもより不機嫌気味に響いた。
頭一つ分くらい低い相手の方がびくりと揺れる。
女か…
しかも学生。
仲間からも言われてる様に、女嫌いの俺からするとこういう場面はめんどくさく感じる。
軽く舌打ちしそうになるのを抑えて、ちらりと彼女を見下ろした。
…あれ。
この制服って…
「すすすみませんっ、よそ見してて…!」
ひっくり返ったような声をあげて勢いよく頭を下げる彼女を、俺は呆然としながら見ることしかできなかった。
まさか
こんな都合よく会えることなんてあんのか。
あんなに話したくて探してた子が
今目の前にいる。
情けなくもその時の俺は完全に思考停止してしまった。
「…いや、俺もよく見てなかったし。悪りぃ」
なんとか謝っただけで、後に続く言葉が出てこねえ。
あー、なんか話すべきことがいろいろあったはずなのに。