「そのうちわかるだろ」
「そのうちっていつだよー、教えてよー」
「てか、もう話したん?俺らの知る限り、隼人が女子と話してるの見たことないんだけど」
「……」
鬱陶しいほど熱く見つめてくる彰たちに、気まずくなって俺は目をそらした。
もちろん話したことなんてない。
目すらもあったことない始末だ。
あいつを初めて見つけた日からもうかれこれ3か月くらい経つ。
ずっとこんな調子でいくのか。
いや…そんなのは耐えられそうにない。
今すぐにでも駆けて行って腕を掴んで引き留めたいくらいなのに。
でもいきなり声をかけて、俺をナンパと勘違いされても困る。
どうやって話しかけるか…、最近そんなことを考えてばかりだ。
せめて俺の存在を気にするくらいには距離を縮めたい。
「隼人」
声のほうを向くと、目の前にしかめ面をした侑介が自分の眉間を指さしていた。
「ここ、シワ寄ってるぞ。硬い硬い、表情が。そんなイカつい顔してっとあの子が逃げちまうぞ。もっと笑え!」
「…笑えっていったって、面白いこともないのに笑えるかよ」
「かっ、これだから不愛想は! あのな、怖い顔してるより、緩い表情のほうが相手は近寄りやすいんだよ。女子ならなおさらな」
前よりましにはなったみたいだが、まだ俺の雰囲気は威圧的に感じることが大きいらしい。
つってもこれ、性格だし
今さらどうしろって…。
「あーもう、お前、あれだ」
と、侑介がコンピにの袋から何かを取り出した。
「常にチュッパチャプスでも持っとけ!そうしてりゃ、ちったぁ可愛げあるぜ」
「チュッパチャプス?」
なんでこれ?
意味がわからず、問うように侑介をみる。
「隼人、甘党だろ?これは妹に買ってやったもんだけど、お前にやるよ。知花にはあとでまた買えばいいから、遠慮すんな」
「だからってなんでチュッパチャプスだよ…」
俺に飴を常に舐めてろってか。
こいつの発想はほんとに幼稚園児向け…。
と不満はありつつもしぶしぶ受け取って、とりあえず口に飴をふくませた。
果たして本当に効果があるのか、まったく期待できなかったけど
もともとの不愛想という性格もネックになるんだとしたら、試せと言われたことは一通りやってみるほうがいいかもしれない。
飴を口の中で転がせながら、頭をかいた。
このままの関係を維持するつもりなんてない。
なにかきっかけができれば…。
―――――――そのきっかけは、
それから早くも数週間後に、突然やってくる。
麻由と初めて会ったあの日を迎えるのだった。