「俺…このままじゃ隼人は婿に行けねえと思ってたんだ…。まあ、好き嫌いはそいつ個人の問題だからなんも言えねえってあきらめてたんだけど、もうそんな心配も必要なくなったぜ…!」
「侑介、おまえ隼人の母ちゃんかよ」
「婿って…未来の心配しすぎだろ」
呆れて言いながら、龍は「まあ実は俺も心配してたけどね」と俺の前に座っていった。
「女嫌いなんて言ってちゃ、この世の愛を知らないまま死んでくことになるんだぜ?
隼人。そんな不幸、お前には似合わないって思ってた……」
「……ねえ龍、おまえ俺に未来の心配とか言ってる割に、自分が似たようなこと言ってるのわかってる?」
冷めた目をおくる侑介を気に留めることもなく、龍はなにか諭すように俺の肩に手を置いて「…よかったな」と戦いの終わった戦士のように晴れやかに笑った。
なんか妙にむかついて、とりあえず龍の頭を殴っておく。
「まあ、俺たちの頭に女がいねーとなあ。シャキッとしねーっつーか」
彰は「あぁ、それでか」となにか思い当たったように手を打った。
「今までここ、毎日来てなかったけど、数か月くらい前からやたら通うようになったよな」
「誰?どんな子? かーいい?」
「俺たち会ったことある?」
興味津々で詰め寄ってくる奴らに、俺は適当にしらばっくれる。
「ねーし、教えね」
「なんでよ!?」
「なんでって…」
教えてもいいけど、知らないんだったら無理に教えようとは思わなかった。
教えたらこいつらは確実に誰かは彼女に接触しに行くだろう。
それはなくても俺が見るたびにこいつらも同じようにあいつを目で追うに違いない。
それが嫌だ。
できればだれの目にも留めてほしくない。
侑介はもう見てるから仕方ねーけど。
「…ハハ」
こんな感情を抱いたのは初めてで、自分で自分がおかしく思えてくる。