傍から見ても、面白いほど困惑しているのが伝わてくる。
侑介は口に手を当ててぶつぶつ何かをしきりにつぶやいている。
そんなに異常なことなのか、俺が女に惚れてることが。
と、自分で思いながら、そりゃそうか、と一人で納得した。
今までほんとに、女の影なんてちらつかせたことがないんだから。
なにせ嫌いだったんだし。
「……春だ…………」
俺は彼女が人ごみに消えて見えなくなるまで見つめた後、呟く侑介を振り返った。
そしてぎょっとした。
「隼人に春が来た――――――!!!」
今にも叫びだしそうに顔を紅潮させていたと思ったら、その通りに思いっきり叫びだした。
「うわっ、びっくりした」
後ろの二人もびびったように眉を寄せて侑介を見下ろす。
「なになに、なに叫んでるの侑介」
「ついに気が狂ったかよ」
「てか…なんだって? 隼人に春?」
侑介の叫びに反応したのは俺たちのツレばかりじゃなく、道行く人も一瞬足をとめるほど。
「うるせえな、静かにしろよ」
俺がため息交じりに言うと、侑介は興奮したようにがばっと顔を手で覆って、神でも仰ぐかのように天に向かって両手を広げた。