「あ、ねえちょっと…」
ふいに不穏な声でつぶやいたゆっこに、私は首をかしげて視線を追う。
そして目に留まった光景に小さく息をのんだ。
パーマをまいたふわふわした髪を揺らして、彼らに駆け寄ってくる可愛い女の子。
真っ先に声をかけたのは真ん中にいた隼人くんで、なんの抵抗もなく彼の腕に抱きついた。
心臓がぎゅっと握られたみたいな感覚がした。
隼人くんは特に女の子に反応はしてないけど、抱きつかれるのを離す素振りはみせない。
鼓動が嫌な響きで高鳴り始める。
あ、なんか……これは……。
これ以上見たくない……。
今さら自分がこんなことをしているのが恥ずかしくなって、足を一歩後ろに引いてしまう。
「麻由?」
「ゆっこ、もう行こう」
「え?でもまだ何も…」
「ごめん…私、行くね」
「ちょ、ちょっと麻由!」
ゆっこの顔も、隼人くんたちのほうも見れず
私はその場に背を向けて走った。