「いいよ、食べるか。一個ちょうだい」



「………はい」


真っ赤になった顔を上げることができず、大福ひとつ紙に包んで手渡した。




「へえ、餅に抹茶練りこんであんの」


「うん。うちの店で人気ナンバー3の商品です」


「1位と2位は?」


「お店に来ていただければ御馳走します」


「なんだ、今日やっぱ入りゃよかったな」


「でも、隼人くん来たの閉店あとですよね?」


「ん? ああ…ん――まあ」



またあいまいな返答をする隼人くんに私は首をかしげる。


そんな私をちらりとみてから、少しため息をついて言った。


「いや、来たのほんとは8時半くらい」


「8時半?」


まだお客さんがにぎわってる真っ最中の時間だ。


って、そんな早くに来てくれてたの?