「隼人くん!」
私が呼び掛けると、ガラス戸の横のベンチに腰かけていた彼が振り向く。
「おつかれ、麻由」
彼のふわっとした笑顔を向けられ、私の心臓はきゅっと締め付けられる。
「ご、ごめんなさい、待たせちゃって…。いつから来てくれてたの?」
「んー…まあ、ちょい前くらい」
隼人くんは少し首に手をやりながら、あいまいな感じにそう答える。
「そっか、ありがとう」
お礼を言うと、隼人くんはうなずいてから「ん」と手を差し出してくる。
「ん?」
「カバン」
「カバンって…あっ」
私が答えるよりさきに隼人くんはヒョイと私のスクールバッグをつかみ取った。
も、持ってくれるのか…。
そんな気遣いにいちいちどきどきしてしまう。
こんなことじゃ心拍数が上がりっぱなしで疲れるだけだ…。
だけど、これじゃほんとにカップルの帰り道みたいで…