閉店時間の21時から、機械の点検、片付けと翌日の仕込みをやると時間はあっという間にすぎていき、やっとすべてが片付いたころには時刻は既に22時になろうとしていた。
「麻由ちゃん、ハイ。お疲れ様!女の子なのにこんな時間にあげちゃってデリカシーないかもしれないけど、頑張ってくれたからね」
学生服に着替え終わって事務室に行くと、増田さんが約束の可愛い和柄の包みに入った大福を手渡してくれた。
「ありがとうございます!」
ご褒美のお菓子に顔がついつい緩んでしまう。
私って結構お子様なのかなー…とちょっと自分にあきれてしまうけど、甘いお菓子を蔑ろにすることはできない。
今すぐ食べたい衝動を我慢して、しっかりスクールバッグの中に収めた。
「いつも夜遅くまで悪いわね。帰り大丈夫? 家族の方に迎えに来てもらったら?」
「あ、えっと…今日は」
私が口を開きかけたとき、入口のほうから大西さんの呼ぶ声がした。
「麻由ちゃーん! 男の子が麻由ちゃんのこと待ってるみたいだよーー?」
「!」
は、隼人くん、ほんとに来てくれたんだ!
私があわてだすと、増田さんは「あら」と意味深に微笑んで顎に手をやる。
「もしかして、麻由ちゃんの彼氏?」
「ちちっ違います! 違うんですけど、彼がこれから遅くなる時は迎えに来てくれることになって…」
「へえ~、優しい男の子ねえ。そんなこと普通彼女でもない子にするかしらね」
このままだと深くまで突っ込まれそうなので、私は早口に挨拶をして急いで店の入り口まで走った。