香里がそうっと下を覗く。等間隔に並ぶ屋台や提灯が数メートル下にあって、そこだけ一際明るい。


「登ってる間は気づきにくいけど、こうして見ると高いよなぁ」


「裕貴の言う通り、ここなら花火もよく見える」


「だろ?下にいるよりこっちの方が楽しめるって」


「いい場所知っちゃった。あ、でも色んな人に教えちゃうと穴場スポットじゃなくなるか」


「そ。ここ狭いし人がたくさん来ると逆に見えにくくなるから、秘密だぞ」


小声で言うと、香里もつられて小さな声で『了解しましたっ』と頷いた。


「花火が始まるまであとちょっとだよ」


「その数分が長いんだよなー」


「まだかな?って待ってるときが1番そわそわしちゃう」


「あー暇だし、しりとりしようぜ」


「いいよ、私からね。じゃあ……パリ」


「いきなりパリって。リ……リス」


「スイス」


「す、スカイダイビング」


「グ?グアム」


「紫いも」