「伊織君、夏祭りは毎年柚月君と行くって決めてるらしいよ。去年も一緒だったらしいから本当にそうなんだ」
「だからクラスの集まりには参加しなかったのか」
「クラスで回ると柚月君といられないからね」
「女子が一緒に回ろうって誘ってそうだけど」
「女子の間では暗黙の了解で夏祭りは一時休戦、ってことになってるって噂で聞いたよ。だから誘う人はあんまりいないと思う」
「自分以外の女子とデートされるくらいなら柚月と一緒の方がいいっつーことだな」
「ふ、そうかもね」
口元に手をあててくすくす笑う香里。
「……もしその休戦協定がなかったら、お前もあいつのこと誘ったりすんの?今だって話しかけようと思えばいけるんじゃね」
永瀬と柚月は俺達に気づいていないようで、少し離れた位置にいあるもう1つのベンチに腰をおろした。
「どうして?誘わないよ。伊織君だって柚月君と一緒の方が気兼ねなく夏祭り楽しめるでしょ」
至極当然という表情でサラッと口にした。
多分うちのクラスの女子ならすぐ話しかけにいくだろうけどな。