「……裕貴、終わった?」


「ああ、うん。これでいいか?下駄履いてみ」


香里は下駄を履きなおして、感覚を確かめる。


自分の体に絆創膏貼るときより何十倍も丁寧にやったからすぐにはとれない、はず。


「さっきより痛くない!ありがとう」


「おーよ」


微妙に、なんつーか、お互い気恥ずかしい空気になって少し沈黙が続く。


香里と話したいことならいくらでもあるはずなのに、どうにも口から言葉が出てこない。


どうしようかと思案しているとき、どこからか聞き覚えのある声がした。


「……――から」


「――……、し」


この声、もしかして。パッと顔を上げて斜め先を見ると、永瀬と柚月がこっちに向かってきていた。


「あいつら……」


「ん?」


「いや、永瀬が柚月といるからさ。よくうちのクラスに遊びにくるやつ」


「どこ?……あ、いた。2人共来てたんだね」


香里は自分の好きな相手が思いがけず近づいてきてるっていうのに、大して反応しない。もっと動揺するかと思ってた。


「あんま驚かねーのな」