「すみません。ひろ……、この子が父親とはぐれて迷子になってしまったみたいで。放送かけてもらうことって出来ますか?」
「おやおや。じゃあ、男の子の名前と年齢は?どこではぐれたかも教えてくれる?」
「ひろ君、名字はなんだっけ?」
「さとう」
「さとうひろ君、年齢は6歳です。林檎飴のお店の前でお父さんとはぐれたらしいです」
「分かりました。今から放送してみるから待っててね」
係員のおじさんがマイクをセットして呼びかけを始めた。
「本部より迷子のお知らせです―――」
放送してる間、不安そうな顔をするひろに向かって香里が変顔で笑わせようとする。
その顔がおかしすぎて俺が笑ったら容赦なくわき腹を殴られた。
何でだよ、理不尽だろ。でもひろが笑ったから別にいいか。
「――繰り返します。サトウヒロ君、6歳の男の子が本部で……」
「紘!!」
放送を繰り返してる途中、ひろの名前を呼ぶ声が響いた。
もとはセットされていたはずの髪もくしゃくしゃで汗がシャツに滲んでいる状態で走ってきたのは、勿論。
「紘!」
「パパ!!」
ひろは俺からすっと離れ、勢いよく父親に抱きついた。
「紘、お前どこに行ってたんだ!お父さんから離れるなって言っただろ!」