「一旦その林檎飴のお店行ってみる?そこでいなかったら本部にこの子連れていってあげるのが1番だよね」


「だな」


林檎飴を売ってる店は通り過ぎてきたから場所は分かってる。人とぶつからないようにしながら道を戻っていく。


「ねぇ、君の名前は?」


「ぐすっ……ひろ」


「ひろ君か!ひろ君あれ見て、格好いいお面がたくさん売ってるよ」


ひろの気を紛らわせるために香里が話しかけ続ける。


子供に合わせてか、いつもより分かりやすく笑ってみせたり困った顔を作ったりしていて新鮮だ。


香里、こういう顔もするんだなって。


「あそこだ、林檎飴の店」


「ひろ君。ひろ君が見てた飴ってあれのことで合ってる?」


香里が指差す方を見たひろは、こくりと頷く。


「うん。あのあめみてた」


父親とはぐれたのはここで間違いないっつーことか。


確かに綺麗な色の水あめでコーティングされて光ってるようにみえる林檎飴は、小さい子にとったら惹かれるんだろう。