移植手術をするお金なんて私が持ってる訳ないし、入れ墨を彫るなんて以ての外だった。
こんなキズものの私は一生独りなんだと諦めていた。
そんな事を考えるとまた闇に呑まれそうになる。
そんな私を掬い上げたのは、
ピンポーーーーン、そんな機械的な音だった。
ハッと我に帰ると、キッチンの近くの壁にあるモニターを見に行く。見ると、バッチリカメラ目線の虎さん笑顔で立っていて。
「今行きます!」そう言いながら服を着ていると「ゆっくりでいいよぉー?」間延びした声がマイクから聞こえた。
廊下を早歩きで進んで鍵を解く。玄関のドアを開けるとそこにいたのはやっぱり笑顔の虎さんで。
「虎さん、おはようございます」そう言うと、
「やだぁっ、さんなんて付けないで?しかも敬語使われると龍輝に沈められるぅー。ちょっと上がるね?」
ヘラヘラした顔の虎はそんな事を言った。虎が沈められないためにも敬語は使わないでおこうと誓った。
リビングに向かう虎の背中を追いかけた。