「ん、ちょっとトイレ行きたいから離して?」
龍輝の胸を叩くと私を拘束している腕が緩んだ。
緩んだ腕から抜け出すとベットから降りて立ち上がる。龍輝には申し訳ないけどトイレに行くなんてウソ。
あんな恥ずかしい事に免疫がない私は恥ずかしすぎて耐えられない。
そんな事を思いながらドアを開けると黒、黒、黒。家具は全て黒。カーテンも黒、カーペットも黒だった。
私は黒が好きだからいいけどいくらなんでも多すぎない?
廊下を歩いて洗面所へ行くと顔を洗う。鏡に写っている私の服は汚れていて。昨日から同じ服を着ているから当たり前か。
リビングに戻って服を探す。すると、ソファの端っこにある丸められた黒いTシャツを見つける。
それに着替えようと服を脱ぐと目に付くのはお腹辺りにある火傷の跡。それを見て思わず顔を歪め悪夢を思い出した。
家も失って、独りになったあの日佐野組によって付けられた傷。
「これで佐野組からは逃げられない。」と火のついた煙草を笑いながら私に押し当てた。
漫喫にいる間『火傷の跡は消えるのか。』と調べても出てくるのは2つの方法しかなかった。入れ墨を彫るか、皮膚の移植手術をするか。