すると、さらに軽くなったような気がして、美緒に目をやると気を失っていて、苦しそうに涙を一筋流した美緒に軽くキスを落とす。
後ろに控えている紅と虎に帰るぞと言うと、「「は」」と言う短い返事が返ってくる。
車について美緒を膝枕すると俺は虎に口を開いた。
「美緒にあの目を向けるな。美緒に向けずとも美緒のいる時は控えろ。」
そう言ってバックミラーを見ると虎が本当に申し訳なさそうに、「わかりました。気をつけます。」そう言ったのを確認すると、再び美緒に視線を戻して髪を梳いた。

side美緒
目が覚めるとまた白い天井が見えて。でも病院ではない事がわかった。
真っ黒なキングサイズのベットで独りで寝ていた。部屋を見渡すと黒を基調とされたあまり余計なものがない部屋だった。鼻をくすぐるのは、龍輝の香水の匂いと煙草の臭い。
そんな部屋で独りでいるのが寂しくて、できるだけ身体を丸めてもう1度意識を手放した。
再び目を覚ますと、やっぱり同じ部屋で。鼻をくずぐる香りも同じものだった。
でも1つ違う事が。
私のお腹に回っている腕は逞しくて、背中に感じるのは温かい熱。
なんとか、寝返りをうつと真近にあったのは分厚い胸板。少し顔をあげると、穏やかに寝ている龍輝の顔があった。
龍輝が私を包んで寝ていて。恥ずかしい私は腕から逃れようと身を捩った。
すると。
「……ん、起きたのか?」そう言う龍輝の寝ぼけた声が聞こえた。