side龍輝
繁華街へ行くと一斉に集まる視線。しかし、今日は俺にではなくて隣を歩く美緒にだった。
美緒は、珍しそうにキョロキョロしてるのが可愛くて、思わず頬が緩んだ。
でも周りの女達から聞こえるのは美緒を馬鹿にする罵声。
俺はそんな声を無視して、美緒だけを見る。でも、美緒は何かの声に反応して俺から距離をとろうとしていて。
そんな美緒を逃すまいと美緒の腰に手を回す。そして俺はまだ不安の色を目に宿している美緒を見て
「お前は俺の女だ。堂々としてろ。」と言うと、不安に目を揺らしながら自分はそんなに価値があるのかと聞いてきた。
それに、当たり前だ。と答えようとすると後からバカの声が聞こえてきた。
しかも、余計な事まで言うから後で沈めると決意する。
美緒が虎の方を見ている時、頭を撫でようと手を置くと、美緒が震えているのがわかった。
美緒の視線の先を辿ると、仕事モードに入っている虎の目があった。虎の目はすごく冷たいなんの感情もない目で女を見ていた。
そんな目に震える美緒はきっと佐野組の奴らにやられた傷を思い出しているのだろう。
俺は美緒を腕の中に収めると、美緒の息は荒くなっていた。
すると、俺の方を涙を浮かべて見る美緒が、あの日の事を思い出した。と言う。
これ以上ここにいるのは美緒が発作を起こすと考えた俺は美緒の軽すぎる身体を抱き上げた。