美緒を追いかけ、狭い路地に入っていくと美緒が組員達に追い詰められていて。
でも美緒は、俺の惹かれたその双眸で組員を睨み据えていた。
俺は組員達を退かせて、美緒の前に立つ。
すると、美緒は身体を震わせて「なんで、あの時殺してくれなかったの!?」
と泣き叫びながら俺に問い詰めた。

これはきっと佐野組にやられた傷で。
大声で叫んでいる美緒は野次馬を呼び出し始めて。
中には恐らく警察を呼びそうなヤツもいた。

俺は美緒に「すまない」と断りを入れ、美緒の腹に俺の拳を沈めた。

美緒の気を失った身体を抱き上げると、あまりにも軽かった。
よくこんな身体でこんな寒い季節を過ごせるな、と思うと俺にも震えが出て来た。
美緒が呼吸をしているのを確認する様に、俺は顔を近づけ美緒の額に唇を落とした。
それを見ていた組員達が赤面しているのは、後で覚えとけ、と心の中で組員達に語りかけると、察したヤツの顔が青くなっていったのは思わず苦笑いが漏れた。
でも、腕の中の美緒を見るとそんな暇はなくて。
俺は足早に狭い路地を抜けた。