「遥香、ちょっと診察していいか?」



家に帰宅してから、ソファーでゆっくりしていると尊は診察の準備をして私の隣に座った。



「遥香?」



楽しかった時間が、あっという間に過ぎたことが切なくなった。



「え?遥香、どうした?」



気づいたら、私の瞳からは涙がこぼれ落ちていた。



もしかしたら、今日が最後のデートだったのかな。




そう考えると、切なくなった。



「苦しい?」



「違う…。」



尊は、何も言わず私の顔を見つめていた。



それからしばらくして

「…遥香、また元気になったらデートしような。」


そう言葉にした。


相変わらず、尊は私の気持ちを分かっている。



「最後じゃないだろ?これから先も楽しい思い出をたくさん作っていくんだから。泣かないの。」



尊は、優しく涙を拭ってくれた。



それから、私は尊の胸に引き寄せられ気づいたら尊の腕の中にいた。



「絶対、遥香を放したりなんかしない。遥香の命、必ず助けるから。約束する。」



尊の力強い言葉だった。


私も、それに応えるように尊の背中に腕を回した。



「大丈夫だよ。大丈夫だから。」




尊は、リズムよく背中を優しく叩き私の心を落ち着かせてくれた。



「絶対、デートしてね。今は、これからも尊と一緒に生きていけるように、治療も手術も頑張るから。」




「あぁ。頑張ろうな。遥香、これだけは忘れないでほしいんだ。」




「なに?」




「遥香は、1人じゃない。辛い時は、いつでも頼って。」



「ありがとう、尊。」



尊は、少しだけ私から身体を放し、唇にそっとキスをした。




「遥香、愛してるよ。」



突然の尊の言葉に、私の心臓の鼓動は一気に加速した。



「私も、愛してる。」



今度は私から、尊の唇にキスを落とした。



それから、しばらくは診察のことを忘れて尊に身体を任せていた。