それから、無事に実習を終えた。

私が、尊に話した精神科へ行きたいという思いは、授業を受けるうちに次第に強く大きなものへと変わっていった。



あれから、帆乃華さんとは連絡を取り合うまでの仲になった。



COPDも、少しずつだけど良くなっていっていると聞いて、本当に安心した。




COPDが悪化したら、酸素マスクをつけた生活が必要になってくる。




でも、私の喘息は今までとは変わらず悪くなったり良くなったりを繰り返していた。





1つだけ、大きく変わったのは尊が病院にある酸素ボンベを、家に1つ持ち帰ってきた。





尊曰く、私の発作は最近強く重く出ているらしくて、病院まで運ぶ時間が命を落とすかもしれないって言われた。




詳しい治療法は、確立されてないけど、吸入器とこの酸素マスクが、私の命綱になる。






そんな生活の中でも、私は前向きに夢に向かって生きていることが、何より自分でも誇りに思う。








「遥香、今日は遅くなるのか?」





朝の身支度をしている私に、後ろから尊が声をかけた。






「そうだけど…。」






「そっか、今日は診察の日だから忘れるなよ。」






「分かってます。」






「遥香?具合でも悪いのか?」






「えっ?」






「珍しく素直だからさ。ちょっと、おでこ触るよ。」






尊は、そう言ってから私の前髪を少し上げて体温を確認してきた。







「遥香?」






「少し、微熱はあるけど私は大丈夫。


今日頑張れば、明日は休みだから。



行ってきます。」







尊の手を振り払って玄関まで向かおうとしたら尊に再び手首を掴まれた。







「遥香、今日は俺の車に乗って。そんな状態で1人で電車になんて乗せられない。」








「…ありがとう。」







抵抗する力なんて残っていなくて、素直に尊の言う通りに、後部座席に身を投げるようにして乗った。







「学校着いたら起こすから、それまで少し寝てな。」







「うん。」







尊には、何も隠せない。






私が、隠すことが下手と言った方がしっくりくるのかな。







それぐらい、今は余裕がない。









尊の運転は相変わらず落ち着いていて、安心して乗っていられる。








車の微かな揺れに、私は重い瞼を閉じ眠りについた。