それから、どれくらい経ったのだろうか。



気づいたら、尊はいつものように白衣を着ていた。



腕にはまだ、点滴が刺さっていた。





なんで…。





「あ、遥香。起きたか?」







「うん。」








「なぁ、遥香。


今日の実習のことなんだけど。」








「分かってる。」







「え?」







「実習、出たらダメなんでしょ?


大丈夫、ちゃんと分かってる。」







「昨日の煙が、遥香の検査結果に響いてしまってな。」






「そうだよね…。


でも、私は昨日のこと後悔してない。


私ができること、帆乃華さんに対して私にしかできないこと、やれたって思ってる。」








「遥香。」








「ずっと、何かに悩んでいる人に手を差し伸べて、解決した時笑顔になる帆乃華さんのことを見てたら、悩んでいる人の支えになりたいって思った。


精神的に、何かに追い詰められている人を少しでも明るく光を照らしたい。



私が、尊にしてもらったみたいに…。



私、精神科に務めたい。」








「遥香…。


初めて、積極的に夢の話をしてくれたね。



遥香がなりたいって思う気持ちを、俺は支えていくし応援する。




だからさ、遥香。



遥香も、これから色んな壁にぶつかると思う。





そんな時は、俺を頼ってほしい。




辛い気持ちを、ちゃんと吐き出して。」








「尊…。ありがとう。」







「さぁ、そうと決まったら今日はちゃんと安静にしていて。



今日の実習のこと、ちゃんと夏目先生に話しておくから。



学生カンファレンス室に行くけど、何かあったら遠慮しないですぐに連絡してね。」








「うん。ありがとう。」







「遥香。」






私は、尊の胸に頭を引き寄せられた。







「尊?」






「行ってきます。」






「行ってらっしゃい。」








私は、そう言葉にして笑顔で尊を見送った。