すると、遥香の瞳から涙がこぼれ落ちていた。




「遥香?」




次第に乱れていく呼吸。




ゆっくりだけど、遥香の呼吸が早くなっていくことに気付いた。




「遥香、起きて。」




きっと、過呼吸の前兆。





遥香の肩を揺すって、起こした。




「ハァハァ…尊?」




「大丈夫。」




近くにあった紙袋を、遥香の口元に当てて、背中をさすった。





少しだけど、震えていることが分かる。





シーツを握りしめる遥香を見てから、




「大丈夫。ゆっくり呼吸して。慌てずに。」





徐々に呼吸が落ち着いてきた。




それを確認してから、遥香の服の中に聴診器を入れて、胸の音を聞く。




少しだけ早いけど、さっきよりは安定してきた。





「遥香。」





診察しながら、遥香は片手で俺の白衣を握りしめ俯いていた。





「遥香。」




俺は、優しく遥香を抱きしめた。





「尊…ごめんね、仕事中だったよね。」






「遥香。そんなこと、気にしなくていい。それより、不安なことあったら話して。」




「え?」




「何かまた悩んでるんだろ?」



「…今は大丈夫。」



「そうか。話したくなったら、いつでも言えよ。遠慮するな。」




「ありがとう。」





「もう、1人で悩むな。」




遥香は、頷いてくれた。



きっと、今は実習のことでいっぱいいっぱいになっているんだろうな。




遥香を抱きしめていると、気づけば遥香は眠りについていた。




「寝たか。」




こういう可愛いことされると、理性を飛ばされそうになる。




思わず、表情筋が緩み、遥香をベッドへ寝かせた。