「遥香!」



大学に着くと、遥香は点滴に繋がれぐったりしていた。



「あ、佐々木君。久しぶり。」



どうやら、遥香を運んでくれたのは俺の恩師である夏目先生だった。



「お久しぶりです。ありがとうございました。」




1度、夏目先生に頭を下げると、




「遥香さん、体中にあざとか傷があったんだけど、虐待でも受けていたの?」





「過去に、色々あって。」




「そうか。それで、さっき怯えていたのか。」




「きっと、びっくりしてしまったんだと思います。徐々に心を開いてくれているけど、まだ誰かに触れられることとか怖いんだと思います。」



「触れられることが怖いか…。だから、あんな抵抗をしていたのか。身体がだいぶ弱っているのに、すごい力で抵抗していたよ。喘鳴も聞こえていたし、心音にも異常が診られたんだけど、過去に心臓病でも患った?」





「はい。」






「少し、心音に乱れが出ているんだ。きっと疲れが原因だとは思うけど、検査した方がいいと思う。」





「わかりました。ありがとうございます。」





夏目先生に、頭を下げてから、遥香を抱き上げ後部座席に乗せた。




それから、近藤さんに受け入れの準備をお願いしてから、車を走らせた。




遥香を抱き上げて気付いたけど、身体がかなり軽くなっていた。




きっと、食欲もなかったんだろうな。




当直続きで、遥香の様子をちゃんと診られなかった。





激しい後悔に襲われた。





病院に着いてから、すぐに心電図とエコーの準備をしてから、機械を遥香に繋げた。




それから、検査を行った。





心音の乱れは、不整脈だということが分かった。




「ごめんな、遥香。辛かったよな。」





ぐっすり眠る遥香の前髪を整えるように撫でた。