ーside遥香ー


少しずつ、私の歯車が狂っていったのは、もう少し先のこと。



私は、いつも通り講義を受けた。



「遥香、学食行こう。」




「ちょっと、講義で分からないところがあったから、聞いてくるね。先向かってて。」





「あ、俺も行くよ。千尋は?」




「私は、いいや。先学食向かってるね。」




「そっか。早めに済ませてくるから。」




「いいよ、ゆっくりで。それじゃあ。」




それから、私と大翔はさっき教えてくれた先生の後を追い、廊下を出た。




講義の先生は、意外と早く見つかって、早めに用を済ませることが出来た。




「千尋、お待たせ。」




「千尋?」





しばらく何も話さない千尋。



顔が赤くて、様子がおかしい。




私は、千尋の額に手を置くと、





「あつ!」



千尋の額は熱を帯びていた。




「千尋?早退しよう。」



私は、尊に電話をした。




「尊?」



「遥香?どうした?」




「千尋が、熱あるの。診てもらえる?」





「いいよ。すぐに連れてきて。」




「ありがとう。」




尊との電話を切ると、私はタクシーを呼んで、千尋を病院まで連れて行った。





「…おい、千尋。」




病院に着くと、尊に内科へ行くように促され、内科へと向かった。




今、目の前にいるこの人は、千尋のお兄さんで尊の3つ上の先輩の、翔太先生。



「ゲホッ…なんでいるの。」



「なんでじゃないよ。いつから具合が悪かったんだ。」



すごい剣幕で、千尋を見る翔太先生。



「いつからでもいいでしょ。もう帰る。」



「あ、こら。ダメだろ。熱も高いし、今日は点滴だ。遥香ちゃん、大翔君。千尋を連れてきてくれてありがとう。」




「いえ。千尋を宜しくお願いします。」




「任せて。遥香ちゃんも、喘息の方お大事にね。」





「ありがとうございます。」