ーside尊ー


朝、遥香の様子がおかしかった。


きっと、また何かを我慢している。


もう、我慢しなくていいのに。


俺のことを考えて、何も話さないんだろう。


いつまで、遥香は俺のことを気にかけて話してくれないんだろうか。



いや、俺は今まで当直で中々時間を取れなかったことも、原因なんだろうけど。



たしかに、俺は今まで遥香に命令口調で遥香に色んなことを話していた気がする。



俺自身も、反省するべき点はいくつかある。



遥香のためだと思っていた事が、遥香にとって苦痛になっていたのかもしれないな。



もっと早く、気づいていればよかった。



激しい後悔が、俺を襲った。



あの時、遥香は何か言いたかったんだろうな。



俺は、そんなことお構い無しに、自分の気持ちが抑えきれず、自分の気持ちに突っ走ってしまった。




何やってるんだよ俺。


俺は、その後何も手につかなかった。



遥香のことで頭がいっぱいで、他の患者さんのことを考えられなかった。





「佐々木先生。遥香ちゃんと何かあったんですか?」




「え?」



「ずっと、上の空だったので。佐々木先生が大体悩んでいることって、遥香ちゃんのことですよね。」




「はは。近藤さんには、お見通しか。」




「これでも、約3年間。佐々木先生と遥香ちゃんのこと見守らせていただいていますから。何でもお見通しですよ。」





近藤さんと、そんな会話をしていると、俺のプライベートで使う携帯が鳴った。




画面には、ずっと声が聞きたかった人の名前があった。





「遥香。」



「あ、尊…あのね…」




「焦らなくていいよ。」



「診察は?まだ始まってない?」




「あぁ。大丈夫だよ。」




「…尊、朝はごめんなさい。」