「遥香、あまり溜め込んだりするなよ?いつも言ってるけど、我慢は自分にも良くないからな。」



「尊…。」



「よし。今日はもう帰ろうか。」



「え!私帰れるの?」



「あぁ。喘鳴も聞こえなくなったし、今日は俺も帰れるから。今まで、当直で遥香との時間が過ごせなかった分、今日は2人でゆっくりしよう。」



「うん!」



やっと笑顔になってくれた。



やっぱりこの笑顔は、俺の元気の源だな。



思わずつられて微笑んでしまった。



コンコン



誰かが、診察室の扉を叩いた。



「はい。」



俺は返事をすると中に入ってきたのは、俺の従兄弟で今は医大に通っている直輝だった。



「尊兄さん、ちょっと教えてほしいところあるんだけど…。あ、遥香ちゃん!?」



「あ、どうも…」



「直輝、ちょっと今日はごめんな。」



「いいよ、遥香ちゃんは大丈夫?」



「平気です…。」



「やっぱり…どこが悪い?あ、言いたくなかったらいいけど。もし何かあった時のために、俺が遥香ちゃんを助けられるから。」



「助けられるから。って。あなたに負担はかけられません。」



「遥香、大学の人には千尋ちゃんと大翔君にしか話してないのか?」



遥香は、素直に頷いた。



「そっか。この人には話しても大丈夫だよ。遥香の力になってくれるはずだから。」



「だけど…」



「心配性だな、遥香は。直輝も、遥香のことが心配なんだ。だから、遥香のことをいつでも助けられる様に、教えてほしいんじゃないのか?」



「話してもいいけど…誰にも言わないでください。」




遥香は、少し時間が経ってから答えを出した。




「話さないよ。」



「…私、喘息と心臓病を患ってます。それで、ずっと通院してて未だに治ってません。」




「はるちゃん…ありがとう話してくれて。困ってる時いつでも話して。大変な時とか辛い時は俺が助けるから。」



「…ありがとうございます。」



俺は、遥香の笑顔に直輝の顔が赤くなったのを見逃さなかった。



それだけ、遥香の笑顔には破壊力がある。



「遥香、今日はもう帰ろうか。」



「うん。」



「直輝も、送っていくから車乗りな。」



「え、俺は2人の邪魔したら嫌だから1人で帰るよ。」



「ダメだ。今日はもう遅いから。」



「相変わらず、尊兄さんは優しいな。」