それからしばらくして、私はようやく落ち着いた。


呼吸を整え、私は直輝先輩に話した。



「実は…今日の朝、尊に当たってしまったんです。実習に向けての課題とか、日に日に複雑になる講義に追いついていけなくて。尊は、私の身体を大事に思ってくれているから、自分の身体を大事にしろよって言ってくれたことは、ちゃんと分かってるんです。だけど、私には今自分の身体を大事にしている余裕が無いんです。休むと、どんどん追いつけなくなる。」





「ほら。俯いたらダメだよ。尊兄さんにも言われたんだろ?自分の気持ちが分からなくなるだけだよ。それなら、ちゃんと顔を上げな。大丈夫。尊兄さんは、遥香ちゃんの味方でいてくれるから。自分の心に溜め込んできたその思いを尊兄さんに話してみな。話すことで、遥香ちゃんの気持ちが少しでも楽になるなら、俺は、そうした方がいいと思う。我慢しなくていいんだよ。もっと自分を勉強から解放して楽になりな。俺は、尊兄さんみたいに、遥香ちゃんを救えるようなことは言えないけど、少しでもストレス発散をしていかないと、自分が壊れるよ。」




自分が壊れる…か。



そうだよね。



ここ何ヶ月か、1番大変な時尊は当直でそばにいてくれなかったから、話せなかった。



でもそれは、私が都合の良いように考えていただけだった。



尊だって、常にそばにいれるわけじゃない。




ちゃんと分かっていたはずが、分かっていなかった。




ちゃんと、尊に謝ろう。


「直輝先輩、ありがとうございます。」



私は、そう立ち上がり荷物を片付け始めた。



「ここは、俺が見ておくから。電話してきな。」




「え?」




「遥香ちゃんのしたいことは、分かるよ。」



「…ありがとうございます。」




直輝先輩に、頭を下げてから、学食の外に出た。