「私、尊に出会えて本当に良かったな…。」



独り言のように言ったつもりが、ちゃんと尊に届いていた。



「遥香。俺も、遥香に出会えてなかったら、今頃こんなに幸せな人生を諦めていたよ。」




「え?」




私なら、分かるけど…




尊も?




「俺だって、親がいても平穏な生活を送ってきても、遥香に出会うまでは、退屈な人生だったしこんなに幸せな人生じゃなかった。俺だって、こんなに愛おしいって思える人は初めてだし、こんなに誰かの温もりが温かいって感じたことだってあまりないんだよ。人の愛なんか、生温いものだと思ってたから。でも、本当の愛はそんなものじゃない。温かくて、でも苦しくて。迷いばかりで、だけどたまらなく愛おしい。遥香に教えてもらったことだ。だから、遥香。俺は、遥香に出会えたこと、信じて着いてきてくれたこと、本当に感謝してる。」




「尊…。」




私は、尊の心の内を聞けて嬉しかった。



「私も、尊に色んなこと教えてもらった。助けてもらった。尊が今、そばにいなかったらって考えると、想像したくないくらい怖い。だから、尊に会えたこと、あの日に一緒に住む決意をしてよかったって思ってる。私には、尊の代わりなんか誰もいない。尊しか、ありえない。」



精一杯の、私の告白。



今更だけど、伝えたい言葉。



尊の代わりなんか誰もできない。




「遥香…。あー、ごめん。」




「え、尊?泣いてるの?」




「遥香が泣かせたんだから、責任取れ。」



抱きついたまま、私にそう言う尊がたまらなく可愛いと思った。


だから、私は尊の頭を撫でた。




「遥香。子ども扱いするな。」




「子供でしょ。」




嬉しくて、温かくて。




この温もりが、愛おしい。