「遥香、ちょっと胸見せて。」
「やだ。」
伸びてきた尊の腕を、私は振り払っていた。
「遥香?」
たとえ、尊も一緒に手術に入ったとしても、私は傷口を見せたくなかった。
やっぱり、好きな人なこんな跡は見られたくない。
それに、私自身傷口が怖くて見ていない。
「…遥香、ちゃんとくっついているか見たいんだ。だから、少しだけ見せて?」
「…分かった。」
これ以上、尊にも迷惑をかけるわけにはいかない。
私は、なるべく自分の傷口を見ないようにして服をめくった。
「…よし。完全に、塞がってきたな。」
「よかった。」
「一応、消毒しておくな。」
尊に、消毒をされてからいつもの検査が始まった。
「今日も、血圧低いな…。」
「え?」
「よし。じゃあ、これに思いっきり息を吹きかけてね。」
久々の、この検査に私は疲れ果てていた。
「よく頑張ったな。採血もしたいところだけど血圧も低いから、今日はやめておこう。明日様子みて、採血に問題なかったら退院だよ。」
「退院!?」
私は、その言葉がとても嬉しくて、気付いたら立ち上がっていた。
「ほら、嬉しくても急に立ち上がらない。」
ふらついた私を、尊が優しく抱きとめてくれた。
「近藤さん、遥香のこと病室にまで送っていくから、休憩入っていいよ。」
「分かりました。」
それから、私は尊と病室に戻った。
「尊?午前の仕事は終わり?」
「あぁ。今日は遥香で最後。午後から休みだよ。」