ーside尊ー


俺は、今起きている出来事を受け入れることが出来なかった。



遥香の心臓が止まった。



心停止をしてから、何とか一命をとりとめてくれたが、一向に目を覚ましてくれない。




遥香が、意識を失ってから3日が経っていた。



「尊。」



「親父。」



俺は、遥香の様子を見ていると親父が部屋へ入ってきた。



「遥香ちゃん、そろそろ手術しないと本格的に危ないかもしれない。また、いつ心停止するか分からない。だから、手術に踏み切ってみないか?」




「遥香の意思を…俺は尊重したい。」




「尊!お前も、医者なら分かるだろ?このままだと遥香ちゃんは明日生きていくことが精一杯だよ。辛い思いをさせたままでいいのか?もしものことがあったらどうする。」



「…」



俺は、親父の言葉に何も言い返せなかった。




医者として、一刻も早く遥香の手術に踏み切った方がいいのかもしれない。



だけど、遥香はまだ体力もつけられていない。



そんな状態で、手術をして大丈夫なわけがない。



成功する確率も、かなり低い。



だから、俺は賭けてみたかった。



遥香が、目を覚まして体力をつけてから手術をさせてあげたかった。



遥香が、それを望んだから。



体力をちゃんとつけて、絶対手術に勝つと俺に笑いかけてくれたから。



だから、遥香の意思を尊重したかった。




「大丈夫、尊。絶対俺が遥香ちゃんを助ける。俺も、遥香ちゃんを大切な家族の1人として守っていきたいんだ。だから、お前の大切な遥香ちゃんの命、俺にたくしてくれないか。信じてくれないか?」



親父は、真剣な瞳でそう言ってくれた。



親父が、手術に入ってくれるなら、俺は安心できる。



俺が、医者として尊敬する人なら信じることができる。



だから、手術に踏み切った。