でも、観たい。葉山を応援したい。

だって、どんなに突き放されても好きなんだもん……


「ごめん。応援出来ない」

「……なんで?」

「葉山を応援したい。そう約束したの」

「約束、ねぇ。綾音は先輩が好きなんだ?」

「好きだよ」

「あんなに冷たくされたのに?」

「それでも好きな気持ちは変わらない」


まだ葉山に言えてない。

細井とのこと。私の気持ち。

手紙じゃなくて、私の口で言わないとちゃんと伝わらない。


「私、行くね」


もう葉山のクラスのサッカーが始まってる時間だ。


また冷たい顔を向けられるかもしれない。
怖くて、不安でたまらないけど。

それ以上に、葉山を見たい。
好きっていう気持ちの方が上回って、弱気な私を動かした。


ドッヂボールが行われてる野球部の練習場から校庭に走る。

近いのに遠く感じ、気ばかりが急く。




試合はもう始まっていた。


「綾音!遅いよ、何してたの」

「ごめん。試合は?」

「始まったばっか。でも、葉山の様子がおかしいんだよね」

「おかしい?」


ほらあそこ、と花梨が指を差す方を見ると、葉山が時折チラチラと応援席に目を向けている。



「誰か探してる?」

「綾音のこと探してんじゃない?」

「まさか…」

「ねぇ、声出して応援してみなよ。気付くかもよ」

「でも」

「約束したんでしょ」


葉山が私を探してる?
待っててくれたの?

今朝、あんな風に気まずい雰囲気になっちゃったのに…?


鼓動が速い。凄く緊張するけど……
スーッと息を吸って、心を決めた。


「葉山頑張れっ!」


精一杯大きな声を出した。

応援の声があちこちから聞こえる。
私の声なんて掻き消されちゃうかもしれない。

葉山に届かない確率の方が遥かに高い。


なのに、葉山は私の声に導かれるようにこっちを振り返った。