「は、葉山……?」


私の呼び掛けに葉山はハッと目を見開く。

すぐに私に目をやるも、難しそうな表情のまま明らかな作り笑いを浮かべた。


ズキン、と心臓が痛みに震える。

さっきまで笑ってたのに……
どうして今そんな難しい顔して無理矢理笑ってるの?


葉山の難しそうな顔、威圧感たっぷりの瞳。

あまり見たことがない姿に不安が一瞬で広がる。

今の今まで順調過ぎて怖いぐらいだったのに、絶壁の端に立たされてる気分だ。


速過ぎる鼓動と広がる激しい動揺に自分自身が追い付けない。

胸が、心が…苦しい……



その後の練習には、案の定身が入らなかった。

バスケする葉山が、心なしか少し元気がなく見えた。







「ん〜……」


私は一人、悩んでいた。

ペンを持ったまま書き掛けの手紙と睨めっこして、もう何分経つだろう。



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今日の昼休み、難しい顔してたけど
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何かあった?
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私が気に障るようなことしたかな?
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悩みの種はこれ。

こんな事、聞いていいのかな。
ちょっと踏み込みすぎ?

私の思い過ごしかもしれない。
寧ろその方がいいんだけど、あれは八割思い過ごしじゃないと思う。

だって、それまではキラキラした表情をしてた。

急にあんな顔するなんて、たった数秒の間に何か気に障るような事でもあった?

私がまた怒らすような態度取っちゃったとか……


「ああもうっ‼︎わかんない」


一度は書いた手紙をビリビリ破くと、丸めてゴミ箱に投げる。

紙のボールはゴミ箱の淵に当たって床に落ちた。

心の乱れだ。
バスケットマンとして、例えゴミだとしても、狙って打ったシュートはどんな時でも決めたいのに。


結局、ゴミは拾ってちゃんとゴミ箱に捨てた。

手紙も一から書き直し。
その話題には触れられずに他愛もないことを書いた。