「あの、昨日の件のお話しなので
できれば誰もいないところの方が…。」

「昨日の?……ああ、そういうことか。
それなら生物準備室でもいい?」

「はい。」



ちらっと市田さんの方を見ると、
案の定妬ましそうな顔をしていた。

市田さんに少し意地悪をしたい気にもなったが、やめておくことにした。

部屋に入るなり、私は先生に向かって頭を下げた。



「昨日はごめんなさい。吉澤君のことであんなにキレて。」



時間が経てば経つほど申し訳ない気持ちが強くなった。



「や、新沼。頭下げるほど謝らなくていいから。
あれは俺が失礼な質問したからであって怒るのは当然だって。」

「でも私も感情的になりすぎたなって。」



私は一呼吸おいてから次の言葉を発する。



「私、吉澤くんのことはもう好きじゃないですよ。」



先生からしてみればいまやもうどうでもいい情報かもしれないけど、
先生に好きになってもらうためにはアピールしなきゃ。



「そっか。お前が失恋から立ち直れているのならよかったわ。」



からかったわけではなく、
心配してくれていたのか。

言葉で言っても分からないことってたくさんある。